食事の記録は、ほんとうに効くのか

「食べたものを記録すると痩せる」とよく言われます。食事記録のアプリを作っている側としては、そう言いたいところです。

ただ、調べてみると言い切れないことが分かりました。効くという根拠も、それに反する結果も、どちらもあります。

それでも、研究を並べてみると 1 つの共通点が見えました。先に書いておきます。効くという根拠は、どれも「記録を続けた人」の話でできている、ということです。

効くと言われている根拠

記録は行動療法の中核とされている

減量の行動療法では、セルフモニタリング(自分の食事や体重を自分で記録すること)が中心に置かれています。Burke らの 2011 年のレビューは、記録を「行動的減量プログラムの中核(centerpiece)」と表現しています。

ただし同じ論文が、根拠の水準は弱い(weak)とも書いています。試験のなかで「よく記録した人ほど減った」という関係が見えるだけで、やる気や生活の余裕といった別の要因と切り分けられていないためです。

要するに、記録は減量の指導の真ん中にある手法です。ただしそれを支えているのは「よく記録した人ほど減った」という観察で、記録そのものの効果を単独で示したものではありません。

Burke LE, Wang J, Sevick MA. J Am Diet Assoc. 2011;111(1):92-102

続いた人ほど、結果が出ている

記録を続けた度合いと減量の関係を見た研究があります。SMART 試験では、記録の遵守率が 60% 以上の群と 30% 未満の群で、減量に有意な差が出ました(p<0.001)。

要するに、「記録すれば痩せる」ではなく、「続けられた人は結果が出ている」という形の根拠です。続けられなかった人は、この差の外側にいます。

Burke LE ら. Am J Prev Med. 2012;43(1):20-6

気づくための道具として

厚生労働省の e-ヘルスネットは、記録について「課題や改善点を可視化できます」と説明しています。同じ資料に、3〜4% の緩やかな減量でも検査値は改善するという記述もあります。

要するに、記録の役目は痩せさせることではなく、自分の食べ方に気づくことです。そして気づいた先の目標は、大きく減らすことでなくてよい。これも、記録を続けて見返す人がいて初めて成り立つ話です。

続いた人の足あと

それに反する結果

アプリを渡すだけでは、差が出なかった

記録アプリを渡した群と渡さなかった群を比べた無作為化試験があります。6 か月で −0.30 kg、95% 信頼区間 −1.50〜0.95。つまり有意な差はありませんでした。

要するに、記録の道具を手に渡すだけでは、結果は出ていません。上の 3 つの根拠が「続けた人」の話だったことを思い出すと、これは矛盾ではなく、同じことの裏側です。渡された人の多くは、続けられなかったのだと考えるのが自然です。

Laing BY ら. Ann Intern Med. 2014;161(10 Suppl):S5-12

渡されたまま、開かれない道具

研究から分かったこと

並べてみると、こう整理できます。

つまり「記録は効くのか」という問いは、調べた範囲では「記録は続くのか」という問いにほとんど吸収されます。効いた人は続けた人で、効かなかった場面では続いていない。記録が効くかどうかを議論する前に、続くかどうかを片づける必要がある、というのが調べた結論です。

問いが一つの流れに集まる

だから、簡単であることを優先しました

Bosott を作るときに考えたのは、精度を上げることではなく、手数を減らすことでした。

食べたものを、ぼそっと 5 秒つぶやくだけ。品目を検索する手順も、量を選ぶ手順もありません。ホーム画面のウィジェットや Apple Watch から、アプリを開かずに話せます。

足すべきは機能ではないと思いました。本当に記録するべき部分だけに絞って、それをいかに手間なく記録できるかに尖らせました。

ぼそっと話す小さな吹き出し

この記事の数字は、すべて原典を確認して書いています。確認できなかったことは書いていません(たとえば肥満症診療ガイドライン 2022 の推奨グレードは、公開資料から読み取れなかったため触れていません)。