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作るときに、大切にした 2 つのこと

食事の記録アプリを作るとき、機能を足すのは簡単です。難しいのは、何を大切にするかを決めて、そこから外れるものを足さないことでした。
Bosott の設計の芯にあるのは、2 つです。ほかの記事と重なるところもありますが、ここにまとめて書いておきます。
1. 食べる喜びを、損なわない
食べることは、人にとっての幸せのひとつです。誰かの誕生日にケーキを食べる日があります。ご褒美に焼肉に行く日があります。旅先でその土地のものを食べる日があります。
記録は、その喜びを削るためのものではありません。ところが 1 日ごとに目標を決めて採点する仕組みは、そこを削りにいきます。ケーキを食べた日の夜に「目標を超えました」と言われる体験を重ねると、人は記録をやめるか、ケーキをやめるかのどちらかを選びます。どちらも、してほしくありませんでした。
だから Bosott には 1 日の目標カロリーがなく、食べすぎた日に怒るような表示もありません。食べすぎた日があっても、ほかの日とならして 1 週間で見ます(1 日ではなく、1 週間で見ることにした)。食べすぎる日は、あっていい。それを前提にした作りです。

2. 数字に追われる生活から、抜ける
よくある記録は、1 品ごとに、品目を探して、選んで、量を入れて、登録する。この 4 手順です。3 品の食事が 3 回で 1 日 36 回、1 年で 13,140 回になります。この手順を何年も続ける生活を、送りたい人はいないと思います。食べるたびに画面に向かい、品目を探し、量を選ぶ。食の楽しみが記録に縛られるのは、順番が逆です。
Bosott は、入力を「ぼそっと話す」だけに絞りました。「昼は生姜焼き定食」で終わりです。1 回が速いので、1 日分をまとめて 1 回で話すこともできます(食事記録が続かない、いちばんの理由)。
同じ理由で、出す数字も絞りました。カロリーと、たんぱく質・脂質・炭水化物まで。ビタミンやミネラルは出しません。話した言葉から推測はできますが、どんぶり勘定になり、嘘の数字を信じさせることになるからです(ビタミンは、あえて記録しない)。追いかける数字を減らすことも、数字に追われないための設計です。
1 年で、アプリから卒業してほしい
アプリを作る側の目標としては変な話ですが、書いておきます。
Bosott の最終的な目標は、使う人が普段からカロリーの感覚を持てるようになり、アプリがなくても暮らせるようになることです。「これは 800 kcal くらい」「今週は少し多かった」と、記録しなくても分かるようになったら、記録は要りません。
だから、1 年後にはアプリから卒業してほしいと思っています。毎日話して、出どころの見える数字を見て、週の流れをながめる。それを 1 年続けたら、数字はアプリの中ではなく、本人の中にあるはずです。
ずっと使い続けてもらうことを目標にすると、設計は「手放せなくすること」に向かいます。卒業を目標にすると、設計は「身につくこと」に向かいます。Bosott は後者でありたいと思っています。
